「より良い人間になるための仕事」
まだまだ暑かった前の月と比べると、風も随分と秋らしく心地よくなってきましたね。夏の間に子どもたちを暑さから守ってくれていた園庭の木々も落葉を始め、ここからは子ども達、先生、業務の方々ともに、落ち葉掃除で毎日大忙しです。
さて、つい最近のことですが、乳児クラスの主任の先生から、この落ち葉掃除のとてもいい話を聞きました。朝9時、園庭で遊んでいる乳児さんたちがお部屋に入る頃、落ち葉を掃いてくれていた2歳児の女の子から「せんせ〜、いっしょにしよ〜」と掃き掃除に誘われたそうです。主任の先生は9時にはお部屋に子ども全員を戻さなくてはと思い、一瞬とまどったそうですが、一生懸命掃除をしてくれていた子どもからのせっかくのお誘いだったので、一緒に掃き始めたそうです。10分ほどある程度の落ち葉を掃いた後、「もうそろそろ終わろうか?」と言うと、「こっちにもまだあるよ」「ここにもあるよ」「こっちもね」と、全くやめる気配なし。少しずつ掃いては、集めた落ち葉を篩にかけて砂や小石をはらい、園庭の堆肥置き場に持って行って入れる、という作業を、繰り返すこと1時間半(!)、結局、園庭中の落ち葉を端から端まで一枚も落ち葉がなくなるまで全て掃ききってしまったそうです。
この話から、私はモンテッソーリの言う「人間の傾向性」の話を思い出しました。モンテッソーリは、人間には動物にはない幾つかの持って生まれた「傾向」があり、それらは、私たち人間が人間らしい特性を獲得するために役立ってくれます。傾向性には「コミュニケーションをとりたい」「探求したい」「想像したい」「社会的な存在になりたい」など様々なものがありますが、この2歳児の行動の中には、その中のいくつかの傾向性を見てとることができる気がします。
①「仕事がしたい」
何か自分のできる仕事を探し、仕事をしていく中で手や道具を使う術を獲得していく
②「繰り返したい」
作業を何度も繰り返しやることで、できないことでも徐々にできるようになる
③「正確にしたい」
作業の中で、自己訂正を積み重ねることで、少しでも正確にできるようになる
④「秩序正しくやりたい」
作業の目的が達成するように、筋道立てて順番通りにやる。
こんな子どもたちの生まれ持ったより良い人間になるための傾向性が存分に発揮され、その「やる気」の火を消さないように、上手に援助していきたいものですね。
園長 大原 青子より