「子どもと接する先生の心がまえ」
蝉捕りの白い網が園庭をかけめぐる夏の風物詩が、今年も再現されていますが、蝉の鳴き声に負けないプールからの歓声も、暑さを吹きとばしてくれます。また、オリンピックでの日本選手の活躍も大したものです。「後生おそるべし」という古いことばがありますが、日本の若い選手の真面目な頑張りには、本当に頭が下がる思いです。子どもたちのなかにみなぎるチャレンジ精神が、この頑張りを引き継いでいくのでしょう。
ところで、モンテッソーリクラスで子どもたちと接する先生は、いわゆる「教える人」ではなく、「子どもの持っている能力を導き出す人」とされています。子どもの自発性に基づく活動を、尊重していくという立場からすれば当然のことです。モンテッソーリは、この立場の真価が充分に発揮されるための資質をいくつか挙げていますので、紹介しましょう。
① 「愛情」…普通、小さく幼いものをかわいがり、いつくしみたいと思うのは当然です。しかしそれだけにとどまらず、「人間」という存在に添い興味を持つことを求めています。というのも、そこから子どもに対する冷静で客観的な立場と鋭い観察力が生まれてくるからです。
② 「信頼」…子どもは全て、成長のために準備された良い環境におけば、必ず自分の持って生まれた良い姿を見せてくれることを信じることです。さらに又、子どもには自分の成長に必要なことを選択していく能力があることを信じてやることです。
③ 「忍耐」…自分の気持をおさえて、子どもの自発的意思が出てくるのを待ったり、ひとりひとり異なる生活リズムを尊重してやることです。まだ幼い子どもには、つい口や手を出したくなるものですが、それを抑えることの大切さを求めています。
④ 「謙虚」…年令はずっと上だけれども、まだまだ未熟であり、子どもたちの姿から多くのことを学ばせてもらいたいという気持ちを持つことです。いわゆる「上から目線」ではなく、子どもと同じ目線で付き合っていくのが、大切であることを求められているのです。
以上4つの項目をあげてみましたが、身につけていくのは容易ではありません。しかしそうありたいと努力すればする程、ひとりの人間と奥が深く幅が広がっていくのは事実です。子どもはそんな先生のふところに喜んで飛び込んでくるでしょう。
子どもからすれば、たとえまだ幼くても、ひとりの人間として認められ接してもらっていると感じます。自分の存在と価値が正しく認められている環境ほど、居心地のいいものはありません。人生における貴重な社会生活の土台である、人間どうしの信頼関係を子どもの中に植えつけていくためにも、良識あるモンテッソーリ教師の完成への道を、歩み続けていかなければと考えています。
理事長 江口 浩三郎より