「子どもは動きながら学ぶ」
園庭の桜も満開を迎え、春の心地よい日差しの中で子どもたちの外遊びにもより一層精が出ているようです。砂場でせっせと穴を掘っている子、鬼ごっこで駆け回っている子、鉄棒にぶら下がっている子、畑に水やりをしている子、泥団子作りに夢中になっている子、などなど、それぞれのやりたいことをお腹いっぱいに楽しんでいるようです。
それにしても6歳までの子ども達は本当によく動きます。モンテッソーリはすでに100年以上も前から、「子どもは動きながら学ぶ」と言っていますが、確かにこんなに動きたくなるのは、やはり「動くこと」が自らを成長させるための大切なプログラムであるということを、子ども達は無意識に理解しているのでしょう。
今日の脳科学でも、運動が脳全体の発達に大きく寄与していることについて多くの研究結果が報告されています。特に、6歳ぐらいまでの子どもが体や手を動かすことに関しては、それが単に運動能力や体幹が育つ・手が器用になることだけでなく、知性や意志の発達を促すこと、また最終的には、調和の取れた人格形成へと向かわせてくれる大きな原動力として、欠かすことのできないものであることが、ようやく科学的に証明されはじめているのです。
この運動発達、初期においては赤ちゃん達のようにハイハイしたり、伝い歩きをしたりと、とにかく全身を思い通りに動かせるようになることが目的でしょう。そしてその後、そこまでに習得した体や手の動きを徐々にコントロール(制御)していくことが始まり、それを日々積み重ねることで、雑だった動きが徐々に洗練されていくのです。
例えば園でも、バケツの水を砂場の穴にジャーっと入れることなどは、2歳くらいになれば誰でもできるようになりますが、「ピッチャーのお茶を小さなコップにこぼれないように注ぐ」ような洗練された動きは、自らの「動きを制御しながらゆっくりと意識して動かす」ということを、日々、何回も繰り返しやり続けることでしかできるようにはならないのです。
そして幼児期におけるその洗練の最終段階、「すべての動きを止める」ことができるようになります。これにはもちろん、精神的なものもしっかりと育っていなければなりませんが、さんざん体を動かすことによって、最終的には「動かない」ことをマスターする。一見矛盾するようですが、実際に「動く」ことによってしか、「動かない(動きをコントロールする)」ことを学ぶことはできないわけです。
先月18日には、卒園式がありました。自分の名前が呼ばれるまでじっと座っていられるという立派な「動かないでいられる」年長さんたちの姿を、また今年も見せてもらいました。なんという素晴らしい成長でしょう。
さて、新年度です。子ども達がたくさん動いて、心と体の新たな成長を見せてくれること、本当に楽しみですね。
園長 大原青子より