「抽象の世界へようこそ」
先日は、超大型台風がやってくるということで、どれくらいの被害が出るか非常に心配しましたが、大したことにならずホッとしています。もうこの秋の災害情報は、これくらいにしておいてもらいたいですね。
ところで、以前私が園長の頃、皆さまへの話の中で問いかけていた質問がありました。「小学一年生のランドセルの中には、何が入っていますか?」と。答えはもちろん教科書ですが、言いかえればそれは「文字」や「数字」、すなわち「抽象の世界」なのです。
生まれて間もない0才1才の頃、子どもは自分で直接触れたり見えたりするものでしか、環境を確かめることが出来ませんでした。それがほんの6年で、抽象の世界へ入っていくことになるのです。ですから私たちは、全く無理のないスムーズな方法で、そのことを可能にしなければなりませんが、ここで大いに役立ってくれるのがモンテッソーリ教具なのです。かいつまんで説明しましょう。
① 日常生活の練習…日常生活で使用する道具には、全て名前があります。また道具を使って作業するものにも呼び名があります。子どもは、作業を通じてその全てを覚えていきます。さらには横で聞いただけで、名前や呼び名をイメージできるようになります。
② 感覚教具…感覚的な体験を明確にイメージして理解するのは、簡単なことではありません。しかし子どもは感覚教具を手で触れ、においをかぎ、舌で味わいながら、イメージを整理し理解していくのです。感覚教具が「具体化された抽象のシステム」と呼ばれるのももっともなことです。
③ 算数教育…最初は数量(具体的)、数字(記号・マーク)、数詞(ことば)の三者関係の理解から始まります。その後、色々な教具の活動を経験し、最後は、かけ算、わり算、暗算へと進み、記号としての数字を理解していきます。
④ 言語教育…算数と同じように、最初は具体的、名前(文字=記号)、呼び方(ことば)の理解から始まります。最後は文章の書き方、手紙の書き方まで進みます。すなわち、記号としての文字の取り扱い方をマスターするのです。
⑤ 文化教育…「恐竜」や「宇宙」「世界の民族」など幅広い知識を吸収しながら、想像力、創造力を高めていきます。
生まれてまだ5・6年ですが、子どもの毎日の活動はこんなに充実し、全く無駄がありません。だからこそ1年生になっても、ランドセルの中身にうまく対応できるのです。ランドセルが子どもたちを、無限の世界に導いてくれると考えたら、私たちも楽しくなりますね。
理事長 江口 浩三郎より