「知性を伸ばして、判断力を支えていこう」
時折、暑い日射しが照りつけてきて、夏がそこまでやって来ているのを知らせてくれます。やがてプールの方から、子どもたちの歓声が聞こえてくることでしょう。
この世の中、コロナにウクライナ、諸物価の値上げと、気分が下向きになることばかりですが、それでも、子どもたちの元気な声と姿に、どれだけ救われているか知りません。
おとなが子どもを守り、子どもがおとなを救うというのは、社会でのうまくとれたバランスなのでしょうね。
ところで、「情操」や「意思」とならんで、「知性」は人格の内容として重要な部分ですが、特に自由な人間性を目指すモンテッソーリ教育では、その発達の成否が大きな影響を及ぼしてきます。
「知性」ということばの内容には、モンテッソーリによれば、「現に目の前にないものを考える能力」と言っています。また、元西南学院短大学長の市丸先生によれば、「自分の置かれている状況を知り、それに対して適切な行動を取らせる働き」と説明されています。どちらをとっても、人が生きていくうえで決して欠かせない能力であり、その育成は幼少期から始める必要があります。具体的には次のとおりです。
① 多種多様の豊かな体験を通じ、そこから得られた多くの印象を受け入れておく……クラスでのお仕事や園庭活動、園や家庭での人間関係、日常生活の体験、散歩や買い物や旅行等で、雑多な体験をさせておきます。
② 常に子どもの身体を動かせておく…特に脳への影響が多い手や指を活発に動かしたり、どんな時でも自分で考えながら体を動かし、活動の正確化・精密化を目指すようにします。
③ 多くの体験にもとづく雑多な感覚的印象を、整理・整とんさせる……子どもが毎日行っている感覚教具を使った活動は、まさにそのためにあるのです。
④ 知性の発達にうまく対応できるような系統性のある環境を準備しておく……環境に導かれて知性は発展していきますが、それが途切れると大きく後退してしまい、取り戻すのが大変です。クラスに、多種多様なモンテッソーリ教具を準備しているのはこのためです。
「自由な生活」というのは、他人に頼らずあくまでも自分の意思で選択しながら行動することです。その時に大切なことは、選ぶ対象がどんなものかを、良く知っていなければなりません。そのためには、複雑なことがらでも、知性の働きできちんと区別・分類して、選ぶ対象の意味するところをはっきりとさせておくことです。
人生は、選ぶことの連続だといっても過言ではありません。選び方次第で、結果が大きく変わってくるかもしれません。だからこそ、幼い時から知性を身に付け、良質の選択が出来るような環境で過ごさせることです。そして、幸福な人生を保障するような、自由な人間が育つことを目指していきましょう。
理事長 江口 浩三郎より