子どもへの宿題『敏感期』
いよいよ秋も深まりをみせ、園庭のけやきの落葉も目立つようになりました。コロナも、日本では随分落ち着いてきましたが、世界的にはまだまだのようです。
園庭での活発な活動も相変わらずですが、特に目を引くのは砂場の中です。そんなに広くもありませんがいつも満員状態で、しゃがんだり中腰になって砂とたわむれています。まさに想像と創造の世界ですが、子どもたちの心を満たしてくれるものがあるんでしょうね。
ところで子どもたちの活動を見ていると、疲れも知らずに休みなく動き回ったり、教えもしないのに話せるようになったり、昆虫や恐竜に興味しんしんといった姿を目にします。
これは、幼児期のどの子にも現れる「敏感期」という現象で、この時期を通りすぎながら、子どもはみるみるうちに成長していきます。それでは、いくつかの事例を紹介しましょう。
・「話しことばの敏感期」…1才から2才半にかけて、子どもはまわりのことばをどんどん吸収し、自分でも話せるようになります。
・「運動の敏感期」…0才から4才位まで続きますが、始めはどんな動きがあるのか、人真似をしながら身につけていき、その後は、自分で自分の動きをコントロールできるように動き回ります。
・「感覚の敏感期」…0才から2才半ぐらいまでは、自分の感覚器官を使って環境をさぐっていきますが、その後6才の頃までは、感覚の洗練と非理することに努めます。
・「書くことや数の敏感期」…4才から6才にあらわれ、文字や数字のはたらきに大きな興味を示してきます。
こんな敏感期についてモンテッソーリは、「神が子どもたちに与えた宿題」と呼びました。宿題だからやらなければなりません。その結果は大きいもので、子どもたちの知性の発達に影響を及ぼし、論理的思考能力・自己教育力・継続し集中した活動能力を身につけることができます。その反面宿題を忘れたときは、どんなことにも自信を持てず動きも不器用で、最後は自分自身の存在を否定された気持ちにもなりかねません。
そうならないように、おとなは子どもの宿題を助けてやらなければなりません。いろんな敏感期を満足させるような環境づくりは当然ですが、それぞれの時期に応じて、無理なく自然な形でその環境になじませてやることです。
毎年どの子どもたちにも、自信と誇りに満ちた姿で卒園していきますが、与えられた宿題を全て終えたという安心感がそうさせるのでしょう。
理事長 江口 浩三郎より