「ひたむきに歩き続ける子どもたち」
明けましておめでとうございます。
昨年、一昨年と、世界中がコロナウィルスへの対応で神経をすり減らしましたが、今年こそは収束してくれることを、心より願うばかりです。よく「コロナ後の世界」という言葉を耳にしますが、子どもたちの世界には前も後ろもありません。新しい年になっても、どんなことにも全身でぶつかっていくことでしょう。そんな子どもたちとまたいっしょに過ごせるのが、私の最大の喜びです。
ところで、1年たったあとのおとなと子どもの違いは何かというと、身長、体重、頭の大きさの変化です。おとなは殆ど変わりはありませんが、子どもは年令ごとにグンと成長し、だからいつも制服や帽子や靴を合わせる必要があるのです。しかしここで大事なことは、見た目のちがいではなく内面(成長)の変化です。それも、8才頃までに人格の9割を創りあげてしまうという程の変化です。そのための歩みを止めたりゆるめたりするのは、子どもに対するおとなの犯罪とも言えるものです。そこで、順調な歩みを促すためのポイントを、いくつか考えてみました。
① 子どもの毎日は、「もっと上手になりたい」「もっと多くのことを知りたい」「面白いことをいつまでも続けたい」といった意欲に満ちあふれています。だから、全ての子どもを満足させられるような環境を、準備しなければなりません。征服従順能力への絶え間ない刺激を、与え続けてやるということです。
② 同時に、子どもの暮らす環境には、はっきりとわかりやすい秩序が組み込まれていなければなりません。「何をどうすればいいのか」「どんなことをしたらいけないのか」「この活動のルールはどうなっているのか」等に、自分で気づいていくためのものです。多くの人といっしょに過ごす社会生活は、複雑でややこしくなる時もあるでしょうが、子どもの頃に身につけた秩序感は、ハードルをうまく乗り越えて進み続けるのに、必ず役立ってくれるはずです。
③ もうひとつ大事なポイントは、気づかずに子どもの歩みを止めたり邪魔をしたりしているおとなの態度です。子どもはまだ幼く、「何も知らない」「何もできない」と思って、つい「手出し」「口出し」したくなるものですが、それがオーバーになる危険性には充分気をつけておきましょう。子どもは決して、おとなのあやつり人形ではないのですから。
新しい年を迎えた子どもたちは、今年もひたすらに歩き続けます。時にはひとりで、また時には友だちと手をつなぎはしゃぎあいながら、前に進んでいきます。そしてうすい皮をはぐようにして、また新しい成長した姿を見せてくれるのです。私たちは道ばたに立って、手を振って応援してやりましょう。その後ろ姿を、温かい目で追い続けていきましょう。
理事長 江口 浩三郎より
「心地よい自分の居場所はどこだろう」
冬の間、子どもたちに良く陽が当たるようにと、けやきの葉っぱがどんどん散ってしまいました。「長い間、日かげをありがとう」と言っておきます。
この1年、コロナに振り回された感じですが、幸いなことに、子どもたちの生活は順調に過ぎていきました。ご家庭のご協力にも、心より感謝しております。このまま、なんとか収まってくれればいいですね。
ところで、長い人生とは、自分の心地良い居場所をさがし求める旅と言っても、必ずしも間違いはないでしょう。幸いにも良い居場所を見つけた人は、そこをベースにして更に自分の成長を求めていくでしょうし、まだ定まらない人は、自分の努力と他人の助力によって、居場所を発見するはずです。このことは、幼児期の経験が大きくものをいってきますが、具体的にはどんなものかを、いくつか考えてみましょう。
① まず第一に、子どもが一番長く過ごすクラスに準備されている環境が、「敏感期」を満足させるものであるということです。子どもが幼いころ、次々とやってくる敏感期をどう過ごすかは、「神が与えた宿題」であるとモンテッソーリは言っています。そのためにも、毎日のお仕事の内容は、「運動」「感覚」「言語」「算数」「文化」等の敏感期に、充分に対応できることにより、子どもは何の抵抗もなく活動を続けることになり、クラスでの自分の居場所を見出していくことになるのです。
② 次は、保護者や先生との関係です。先月は「ニコニコ笑顔で」と書きましたが、さらにもう一歩進んで、子どもに「自己決定」「自己選択」という自由な活動を認めてやるかどうかです。このことによって、子どもはひとり前の人間として認められていると感じ、自分の存在価値の高さを知り、大きな幸福感を味わいます。まさに心地良い居場所をみつけたという思いにかられるわけです。
③ 次は、友だちや仲間との関係における居場所の見つけ方ですが、これは毎日多くの子どもに接しもまれ続けるなかで、自分で見つけていくしか方法はありません。体格や性格、能力や興味、性別や年令など、自分と異なる多くの友だちと接し続けるなかで、学び続け経験を重ねていけば、必ず自分の居場所を見つけ出すことができるはずです。
居場所の確保は、「探究心を持つこと」や「秩序を求めること」と並んで、人が誰でもそうありたいと願う「人間の傾向性」のひとつです。いつも、必ずしもはっきりと定まっていない目標や能力の発揮について、自分を見失わないためのの重要な手がかりとなるからです。だから私たちおとなも、毎日じっくりと子どもの話に耳を傾けて、居場所がみつかるようなアドバイスをしてあげましょう。
理事長 江口 浩三郎より
「毎朝、ニコニコ笑って園の門をくぐる」
このところ、急に朝夕が冷え込んできて、体調の維持管理が大変ですね。また、コロナは何とか収まっているようですが、このまま終わってくれたらいいですね。
子どもたちは、変わらぬ元気さを見せています。園庭に「クライミング」という新しい遊具が入り、毎日嬉々として群がっているところです。尽きることのない好奇心や向上心があるからこそ、成長の内容を充実させているのでしょう。深まる秋の気配の中で、子どもたちへ目を向け続ける楽しみを味わっていきたいと思います。
ところで、以前私が園長だった頃、「子どもを毎日、ニコニコ笑いながら登園させて下さい。それ以外は何もする必要はありません」と保護者の方にお願いしていました。というのも、子どものその一日の成長は、スタートで決まると信じていたからです。今でも、全くその気持は変わりません。
① ニコニコ笑顔でやってきた子どもは、すでに園庭で元気よく遊んでいる子どもたちの輪に、すぐに入っていきます。園庭での活動は、ちょっと見は乱雑で無秩序に見えますが、決してそうではありません。狭い場所で限られた遊具ではありますが、実に様々な工夫をして面白い活動を見つけています。まさに知恵のかたまりといったところですが、子どもの頭は朝からフル回転しているのです。同時に、友だちの輪の中にいるということは、自分の気持の良い居場所を見つけているのです。
上手に居場所を確保することは、長い人生でのいろんな場面でとても大切なことですが、園庭での遊びのなかで、すでに子どもは学んでいるようです。
② ニコニコ笑ってやってきた子どもは、気分がいいので、何にでも自発的に積極的に取り組んでいきます。そしてどんどん集中して、次々と結果を出していきます。子どもの活動は、やればやる程当然脳や身体の成長発達を促すものですが、自発的な活動を続ければ、そのスピードがグンと速くなります。
③ 毎日気分良く活動に入り、気分良く活動を続けられる子どもは、「知性」「情操」「意思」の三つを、バランス良く身につけ伸ばしていきます。人の輪の中に入り、お仕事の場でやりたいことを選んで集中し、一日の生活の中で自分の役割をきちんとこなし続ける中で、頭の働き、感情のコントロール、意思決定のトレーニングを続けていくからです。
良い人格を形づくる「知」「情」「意」のバランスのとれた発達は、ニコニコ笑顔から生まれるといっても過言ではありません。
子ども時代は、アッという間に通り過ぎます。しかしその短い間に、その子の人格・人間性の土台がしっかりと作られていくのです。そんな子どもの成長の最大の手助けは、ニコニコ笑いしかありません。まずお家の人が朝からニコニコ笑って、子どもを気分よく送り出してください。
理事長 江口 浩三郎より