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「3才まで6割、9才まで9割」

「梅雨の晴れ間」といいますが、6月は晴れ間ばかりで、その分また今月は豪雨じゃないかと心配しています。

子どもたちにとっては、進級後だんだん調子が上がってくる6月の好天は有り難いようで、大・小の筋肉をさらに活発に動かしています。

それにしても、キラキラした目の輝きとくったくのない笑顔、それに大きな声がひびきわたるこの空間は、まさにパワースポットです。そのスポットに乱れがこないよう、しっかりと見つめていきたいと思います。

ところで、今回のテーマの6割・9割は、子どもの脳の発達の割合です。現代の脳科学は急速に発展していて、脳の発達・成長についても正確なデータが出されるようになりました。この数字から見れば、いかに生まれてから小学校2年生くらいまでの間が大事なことかわかります。特に0才から3才までの生活や行動には、充分な配慮が必要です。

それでは、順調に脳が発達していくための大切なポイントをいくつか挙げてみましょう。

〇 子どもの手や指を活発に動かさせる

人間の指先には、2万から5万の神経が集中していて、それが脳と直結しています。また親指が長かったり手首がクルリと180度回ることによって、精密な動きができます。だから脳への働きかけは、体の他の部分の動きとは比較にならないくらい大きいものといえます。モンテッソーリも「子どもの指を休ませない」と強く主張しているほどです。

〇 どんな活動も、自分で考えながらやらせる

これを私たちは「運動の意識化」と呼んでいます。良く体を動かすことも脳の発達には大事なことですが、ただデレデレ・ダラダラやっていても効果はありません。運動の目的を達成するためには、「何をどうしたらいいのか」、「そのためにどんな工夫をしなければならないのか」をいつも考えることです。そのためには、先生が子どもが充分に理解できる具体的な方法や考え方を教えながら、指導していくことが大切です。

〇 どんな時にも、子どもが自分の意思で前向きな気持ちを持って活動していく

脳からの命令は体の隅々にまで届けられますが、そのための神経をカバーする筒があります。この筒が弱かったら命令が届かず、体の動きは鈍くなります。この筒を強化するのが自発的行動です。脳の発達とは関係ないように思えますが、体の動きは脳のはたらきと不可分な関係にあるので「自分からすすんで」というのも大きな影響を持ってきます。

脳の発達の度合いは、人間形成の度合いに比例してきます。順調にいけば、8才ぐらいまでにその子の人格の9割ぐらいが形づくられるということです。8年くらいアッという間ですから、子どもには無駄なことをして遊んでいるひまなどはありません。なぜあんなに毎日毎日、何をするにも一生懸命なのかの秘密がここにあります。モンテッソーリが「子どもに学びなさい」と言ったのは、大きな意味があるんですね。

理事長 江口 浩三郎より

「みんなといっしょに生きていく」

早くも6月となり、夏がやってきました。おとなはいささかゲンナリですが、子どもにとっては思い切り汗をかき、水とたわむれる最高の季節です。いつも目の前にいながら住む世界が全くちがうとは、何と不思議なことでしょう。子どもの目に写るもの、気持ちに問いかけてくるものは、異次元のものかも知れませんね。元気よくにぎやかなショータイムみたいなもので、だからいつまでも見てあきのこないものではないでしょうか。

ところで、新学期になってこの時期になると、クラスの空気もなじみが出てきて、子どもたちはスイスイと泳ぐように動いています。また園庭では、ぶつかったり大声を出しながら、みんなの間をかけまわっています。これはまさにひとりででは出来ない、みんなといっしょにいるからこその現象です。

ヒトには群生本能があり、他人との共同生活のなかで生きていきます。そのためには、幼い頃から他人の中で良く生きるための方法を学ぶ必要があり、具体的には次のようなことが挙げられます。

○「他人と自分のちがいを知る」

人はどんなに沢山いても、自分と同じ人はいません。だから他人とつき合うことは、自分とのちがいを知ることになります。そして、同じでないから面白い。ちがっているから許してあげる。自分にはなく他人にあるものから、多くのことを学ぶことができる、などの利点があります。

○「他人との間(距離)の取り方を知る」

ちがう人間どうしが、生活空間や活動を共にする時は、お互いの間の取り方(距離のはかり方)が大切になってきます。そしてこれこそ、自分を取りまく多くの人たちとの経験によってしか学ぶことができません。失敗したりうまくいったり、泣いたり笑ったりして得たものこそ、生きていくための貴重な財産(知恵)として、自分のなかに蓄積されていくのです。

○「役割りの分担があることを知る」

ひとりひとりのちがいは、能力・才能にもあらわれます。だから、みんなといっしょに何かを成功させようと思ったら、その得意なところを知り出してもらう必要があります。自分を活かし他人を活かすための知恵が、また養われていくことでしょう。

集団生活でみんなといっしょに生活できる知恵を豊かに養ってきた人は、ひとりで生活したり活動することも自然とやっていけます。

なぜなら、いつでもどこでも自分の心の中にも、共に歩める人たちがいっぱいいることを知っているからです。人生でこんな心強いことはありませんが、これもみんな、幼い頃からの集団生活のおかげであるといえるでしょう。

理事長 江口 浩三郎より

「うまくバランスのとれた人になる」

色とりどりのつつじが咲きほこり、初夏の風景が楽しめる季節になりました。新入園児も、まだ時には泣き声が聞こえてきますが、やがて溶けこんでいくでしょう。新しい色になった進級園児は、目を輝かせながらいろいろなチャレンジを始めています。「自分の成長は、自分の頑張りからしか生まれない」ということの自覚のあらわれです。子どもたちのこんな姿は、私にとってつつじの100倍も目を楽しませてくれます。

ところで私はこれまで76年間、多くの人たちと接してきましたが、安心して見ていることができる人、心おきなくつき合える人は、いろんな面でバランス感覚を持っている人たちです。言いかえれば、「三本柱」でしっかり支えられている人たちです。その三本柱とは、具体的には「知性」「情操」「意思」と表現することができるでしょう。

子どもの活動は全て「自己創造(人間形成)」につながっていますが、この時期にしっかりと、この三本柱を組み立てる必要があります。

まず「知性」ですが、これはものごとを筋道よく考えて、どんな環境にも順応することができる力です。そのためにはまず幼児期に、幅広いいろいろな体験をさせることが必要です。その体験を通じ、子どもは何をどうすればどんな結果が生まれるのかの判断力を養っていきます。感覚的実体験が、知性の出発点といわれるゆえんです。

次に「情操」ですが、これはいつも気持ちを安定させながら、美しいものには美しいと感じたり、ものごとに素直に感動したりすることをいいます。子どもは、まだ精神的に未成熟・不安定ですので、まわりのおとなの協力がぜひとも必要です。また園では子どもの自由活動を保障し、欲求を満たす活動環境がありますので、満足し安心して生活できるように努力しています。

最後は「意思」ですが、これも毎日の様々な体験のなかで身につけていきます。特に園では、自己選択による自主的な活動の連続ですから、「自分で考え判断する」ことばかりです。また集団生活におけるルールや秩序も学びますので、意志力の形成には非常に有効だと考えています。

それにしても、私が毎日多くの子どもたちを見わたして感じることは、秩序が乱れず平和な状態が保たれているバランスの良さです。モンテッソーリが「子どもこそが私たちの見本であり先生です」と言ったことは、全くそのとおりですね。

理事長 江口 浩三郎より

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