「うまくバランスのとれた人になる」
色とりどりのつつじが咲きほこり、初夏の風景が楽しめる季節になりました。新入園児も、まだ時には泣き声が聞こえてきますが、やがて溶けこんでいくでしょう。新しい色になった進級園児は、目を輝かせながらいろいろなチャレンジを始めています。「自分の成長は、自分の頑張りからしか生まれない」ということの自覚のあらわれです。子どもたちのこんな姿は、私にとってつつじの100倍も目を楽しませてくれます。
ところで私はこれまで76年間、多くの人たちと接してきましたが、安心して見ていることができる人、心おきなくつき合える人は、いろんな面でバランス感覚を持っている人たちです。言いかえれば、「三本柱」でしっかり支えられている人たちです。その三本柱とは、具体的には「知性」「情操」「意思」と表現することができるでしょう。
子どもの活動は全て「自己創造(人間形成)」につながっていますが、この時期にしっかりと、この三本柱を組み立てる必要があります。
まず「知性」ですが、これはものごとを筋道よく考えて、どんな環境にも順応することができる力です。そのためにはまず幼児期に、幅広いいろいろな体験をさせることが必要です。その体験を通じ、子どもは何をどうすればどんな結果が生まれるのかの判断力を養っていきます。感覚的実体験が、知性の出発点といわれるゆえんです。
次に「情操」ですが、これはいつも気持ちを安定させながら、美しいものには美しいと感じたり、ものごとに素直に感動したりすることをいいます。子どもは、まだ精神的に未成熟・不安定ですので、まわりのおとなの協力がぜひとも必要です。また園では子どもの自由活動を保障し、欲求を満たす活動環境がありますので、満足し安心して生活できるように努力しています。
最後は「意思」ですが、これも毎日の様々な体験のなかで身につけていきます。特に園では、自己選択による自主的な活動の連続ですから、「自分で考え判断する」ことばかりです。また集団生活におけるルールや秩序も学びますので、意志力の形成には非常に有効だと考えています。
それにしても、私が毎日多くの子どもたちを見わたして感じることは、秩序が乱れず平和な状態が保たれているバランスの良さです。モンテッソーリが「子どもこそが私たちの見本であり先生です」と言ったことは、全くそのとおりですね。
理事長 江口 浩三郎より