「ルールを守りたい気持ちはどう育つ?」
「紙をください!」と、今日も5歳児さんがクラスで使う用紙の補充用をとりに来ていました。「はい、どうぞ」と事務の先生が用紙を渡したその時、一緒について来ていた3歳児さんが思わず事務室の中に入ろうとすると、「中には入っちゃダメだよ」と声をかける5歳児さん。こんな風に、年長の子どもが年少さん達にルールを教えてあげようとする姿は日々の様々な場面でよく見かけますが、よくよく考えてみると、本当に子ども達の大きな成長を感じられる瞬間だな〜と思いました。
6歳までのモンテッソーリ教育の大きな目標の一つは「内的規律(内側から自然に湧き出る規律やルールを守ろうとする心)」が育っていること、なのですが、このような心理は、賞罰を用いるような教育では育たない、とモンテッソーリはキッパリと主張しています。
それは本当にその通りで、子どもたちには、「ご褒美」をちらつかせて何かを交換条件の元にやらせようとしたり、「罰」を用いて恐怖心を煽ることでルールを守らせようとしたりすることは、自らの意志で「規律やルールは守るべきだ」という気持ちを育むことはないでしょう。単に「怖いから・怒られるから」やらない、「ご褒美をもらえるのなら」やる、というように、ある条件に基づいてしか作動しない脳回路を作り上げてしまうだけです。
そうではなく、「自らの意志」を使って、例えば「他の人の迷惑にならないようにクラスで大声を出すのはやめておこう」とか「あの道具が使いたかったけど、他の人が使い始めているから今日は別のことをしよう」など、自らの経験に基づき、論理的に考えられるようになるためにも、子どもが自らの選択による自然な結果を体験するのを大人が邪魔しないことこそが大切です。
例えば、「今日は靴を履きたくない!」と駄々をこねる子どもに、「履きなさい!」と怖い声で言って無理やり履かせようとするよりは、その「履かない」という自らの選択が招く「靴を履いてないから外を歩くと足の裏がチクチク痛かった」という結果を体験する方が、ずっとその子には「次からは靴をちゃんと履いてから外にでよう!」と言う気持ちを育てるのには効果的だということです。
この「自由選択→結果を体験させる環境」VS. 「賞罰を与えながらの教育」、これぞまさにモンテッソーリ教育と従来の教育との大きな違いなのですが、皆さんはどんなふうにお考えですか?園でもこんなテーマを話し合える機会を近い将来設けられるといいですね。
園長 大原青子より