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「秩序の網をはりめぐらせる」

秋晴れの雲ひとつない空の下で、今日も大小両園庭から、子どもたちの歓声が聞こえてきます。その園庭の真ん中に立ってまわりを見渡すと、活動の種類の多さにびっくりさせられます。ボールをバンバンけっているサッカーから、片すみでの小さな泥団子づくりまで、その真剣さには変りがありません。子どもの時間の過ごし方には、全く無駄がないんですね。だからあんなにグイグイと成長するんですね。「子どもから学ぶ」ということばには、真実が含まれていることがよくわかります。

ところでモンテッソーリ教育では、子どもの意思を尊重し、自由に活動させることを大原則としています。にもかかわらず、仲間といっしょに過ごす子どもたちの生活では、大した混乱や衝突も見られず、かえって整然とした雰囲気が感じられます。「平和」で「穏やか」なのです。一体なぜでしょうか。それはこの時期の子どもたちが、「内面的秩序感の形成」を求めているからです。

子どもが小さい時、まだ空白の状態から自分という人間を創り出していく時、その大事なポイントのひとつが「内面的秩序感」です。この部分がしっかりと育っていれば、おとなになっても、秩序正しい整然とした行動を取ることができるようになります。

この「内面的秩序性」を育てるためには、子どもの回りの環境がきちんと整えられていなければなりません(外部的秩序)。モンテッソーリはこのことについて、「クラスの隅々にまで秩序の網を張りめぐらせておく」といっています。具体的に言えば、クラスや園内にあるいろんな教材や物が、いつもきちんと整理され、同じ場所に置いてある、順番を守る、決められた時間を守る、先生や友だちの話には、静かに耳をかたむける、教材やその他の物は大切に取り扱い、使ったあとはもとのところに戻しておく、友だちのやっているお仕事をじゃましない、また約束したことはきちんと守るなどです。

まだ幼い子どもたちに実行してもらうのは大変なことのように思えますが、実はそうでもありません。なぜなら、この時期の子どもたちは

① 自分の意思を大切にしながらも、友だちとの集団生活を楽しみたい。

② 無秩序によって引きおこされるエネルギーの浪費をしたくない。

③ 落ち着いた平和な生活が、自分の気持の安定をもたらす。

④ 秩序の整った生活を手がかりとして、自立した行動がとれるようになることを、本能的に知っているからです。

ですから大切なことはただひとつ、私たちおとなの環境に対する心くばりです。こんな

ポイントさえ知っていれば、子育てなんて簡単なものですよ。

理事長 江口 浩三郎より

「モンテッソーリ教具の世界」

たび重なる台風への対応に追われた10月が去り、早くも晩秋の11月となりました。正直なもので、あんなに日かげを作り子どもたちを遊ばせてくれたけやきの木も、お役目終了とばかりに落ち葉の模様を描いています。

それにしても、ラグビーではよく健闘しましたね。今の日本の若者の、目標に向かって突き進んでいく姿には感心するばかりです。

きっと、自分を信じて前に進むことの大切さをわかっているからでしょう。本当に楽しみです。

ところで、園内で見かける子どもたちの表情は、何だかすっきりと満足しているように感じられます。その大きな原因のひとつは、毎日モンテッソーリ教具に、真剣に取り組んでいることが挙げられるでしょう。その世界がもたらす具体的な意味や効果について考えてみました。

① まずはなんといっても、子どもの頃に次々とやってくる「敏感期」を、充分に満足させてくれることです。モンテッソーリはこの「敏感期」を、「神が子どもに与えた宿題」と言っていますが、教具の世界に入ることによって、宿題をこなしていくわけです。

② 教具はまた子どもたちを、「抽象の世界」へと連れていってくれます。生まれて数年間、子どもは回りの環境を、直接手で触れ目で見ることで理解していきます。しかし教具を通して物の名前、色や形のよび方、数字や文字の操作方法を学び、現に目の前に具体的な物がなくても、自分の頭のなかで理解できるようになるのです。

③ 知性を伸ばし、自己選択力を高めていきます。感覚教育から始まるものごとの分類・整理力の向上は、論理的思考能力を育み、想像力・創造力が育ってきます。これが、何かを選ぶときの大きな支えになるのです。人の一生は選ぶことの連続ですが、子どもたちは毎日そのためのトレーニングを行なっているのです。

④ 教具に繰り返し取り組むことによって、「集中力」が身についてきます。私たちひとりひとりの持っている能力には、そんなに大きなちがいはありません。しかし、その能力を表に引き出し良い結果を生み出すためには、どれだけ集中力を発揮できるかにかかっています。モンテッソーリクラスが静かで何だか厳しい雰囲気にあるのは、子どもたちの集中する姿から生まれているのです。

通常の保育現場から見れば、教具の世界は非常にユニークです。しかしそのユニークさが、子どもたちの良い成長のために多くのことを与え続けてくれていることについて、私はいつも感謝の気持でいっぱいです。

理事長 江口 浩三郎より

「人の財産は人である」

久し振りに台風が福岡に近より、園庭の樹木も大ゆれでした。特別の被害がなかったので、胸をなでおろしています。

台風一過の秋空のもとでは、運動会に備えて子どもたちの姿が躍動しています。さすがにこれまでの永い間の成果でしょうか。動きになめらかさと力強さがあります。子どもの今現在の気持が、そのままあらわれているのでしょう。どうか楽しみにしていて下さい。そして当日は、しっかりと目に焼きつけておいて下さい。

ところで、私ほどの年令(78才)になって、今何が大事なことか考えれば、やはり自分で行動できる健康と、生活していくためのお金です。これに加えてもうひとつ大事なことは、今つき合いができる親しい人たちです。

長い人生を振り返って、今さら反省したり後悔しても仕方がありませんが、思い出すのは、「どんな人に出会ったのか」「どんな人から人生のアドバイスを受けたのか」ということです。また、「今自分のまわりにはどんな人たちがいるのか」についてもよく考えます。というのも、人間関係というのは、健康やお金と同じくらい生きていくうえで大事なものだからでしょう。

私の父は私が小さい頃、「勉強しろ」とは全く言わず、「今日は誰と遊んだか」「今日は何して遊んだか」ばかり聞いていました。学校の先生でしたから、勉強と同じくらい大切なものが世の中にはある、と言いたかったのでしょう。

4月号で「子どもの社会性」について書いたにもかかわらず、又なぜ同じことを言うのかといえば、スマホやゲーム機の氾濫が目につき過ぎるからです。確かにこんな便利なものはないでしょう。こんな面白いものはないでしょう。しかしそこには人の影や人のぬくもりはありません。生きた経験を生きた言葉で聞くことはできません。何より、人間が持っている気高い魂や感情のゆれ動きを感じることはできません。スマホに投入して、どんな人生が築けるのか想像もできません。

私は毎日、広くもない園庭で、子どもたちがぶつかり合いながら遊んでる姿を見るのが大好きです。ぶつかることは、他の子の魂に触れるからです。おしゃべりは、他の子の心情を感じ取れるからです。その繰り返しで、子どもの人間性は益々磨かれていきます。そして、どこへ行っても光輝くことができます。一度きりの人生ですから、その輝きを見失なわないようにしましょう。

理事長 江口 浩三郎より

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