「子どもの意思を大人の意思とすり替えない」
「子どもの精神の健やかな成長にとって1番の障害となるものは、大人がその子の意思を自分の意思とすり替えてしまうことである」とはモンテッソーリの言葉です。これを頭で理解することはできても、なかなか実践は難しいものです。先週、このことを思い知らされるようなある出来事がありました。1月初旬よりホールで開かれている恒例の『6歳コーナー』でのことです。
さらなる興味を掻き立ててくれる材料でいっぱいのこのコーナーには、各クラスの5歳児の多くが毎日嬉々として自分の意志でやってきます。私がお手伝いに入ったその日、少しやんちゃな印象の男の子がやってきて、うろうろとしていたので、「元気な男の子=恐竜などが大好き」というようなこちらの勝手な先入観で「恐竜とか調べてみる?」と誘ってみましたが、答えはNO。その後、みずから『ビーズで指輪作り』の本を持ってきて、指輪作りに取り組み始めていました。
その後30分ほど経ってから、「先生ここから先がわからん…」と呼ばれたので、使っていた本を見せてもらうと、なんと、確かにものすごく込み入った手順の図があり、できれば解読してあげたかったのですが、どうしようもありません。それまでに誰も作り上げたことのない大きな宝石(ビーズ)が冠のように真ん中に乗っかる指輪は、到底手に負えない感じでした。
そして、ここでも、こんな複雑なものはまだまだ無理じゃない?という勝手な先入観から、「これはちょっと難しすぎるみたいよ…他のもっと簡単なの作ってみれば?こっちとか?」と他のよりシンプルな指輪へ誘導しようとしてみたのですが、それもNO。私の元をさっさと立ち去り、その後も諦めることなく長い時間集中しながら作り続けていました。
その日の活動時間も終わりに近づいてきた頃、その子が素敵な指輪を作り終え、「できたよ!」と見せに来てくれました。その時の喜びに満ち溢れた満面の笑み!そして、子どもの底力に本当に驚かされると同時に、簡単に他のものに誘導しようとした自分の浅はかさを振り
返り反省しきり…。このケースでは、子どもがしっかりとした意志を持ち、私にはっきりとNO!と言えたからまだよかったですが、そうでもなければ、まさに大人の意思を子どもの意思とすり替えて失敗する好例となっていたでしょう。
子どものためにと大人が先回りして何かしら充てがってしまう事が、子ども自らが育つチャンスをどれほど邪魔をしてしまっているのか、もっともっと意識しておくべきだな、と強く感じた一件でした。
その日の終わり…、指輪を作った男の子に「お母さんにあげるの?」と聞くと、「ん〜自分用♡」と、早速指にはめた感じを見せてくれました。令和です(笑)。
園長 より