「毎朝、ニコニコ笑って園の門をくぐる」

このところ、急に朝夕が冷え込んできて、体調の維持管理が大変ですね。また、コロナは何とか収まっているようですが、このまま終わってくれたらいいですね。
子どもたちは、変わらぬ元気さを見せています。園庭に「クライミング」という新しい遊具が入り、毎日嬉々として群がっているところです。尽きることのない好奇心や向上心があるからこそ、成長の内容を充実させているのでしょう。深まる秋の気配の中で、子どもたちへ目を向け続ける楽しみを味わっていきたいと思います。
ところで、以前私が園長だった頃、「子どもを毎日、ニコニコ笑いながら登園させて下さい。それ以外は何もする必要はありません」と保護者の方にお願いしていました。というのも、子どものその一日の成長は、スタートで決まると信じていたからです。今でも、全くその気持は変わりません。
① ニコニコ笑顔でやってきた子どもは、すでに園庭で元気よく遊んでいる子どもたちの輪に、すぐに入っていきます。園庭での活動は、ちょっと見は乱雑で無秩序に見えますが、決してそうではありません。狭い場所で限られた遊具ではありますが、実に様々な工夫をして面白い活動を見つけています。まさに知恵のかたまりといったところですが、子どもの頭は朝からフル回転しているのです。同時に、友だちの輪の中にいるということは、自分の気持の良い居場所を見つけているのです。
上手に居場所を確保することは、長い人生でのいろんな場面でとても大切なことですが、園庭での遊びのなかで、すでに子どもは学んでいるようです。
② ニコニコ笑ってやってきた子どもは、気分がいいので、何にでも自発的に積極的に取り組んでいきます。そしてどんどん集中して、次々と結果を出していきます。子どもの活動は、やればやる程当然脳や身体の成長発達を促すものですが、自発的な活動を続ければ、そのスピードがグンと速くなります。
③ 毎日気分良く活動に入り、気分良く活動を続けられる子どもは、「知性」「情操」「意思」の三つを、バランス良く身につけ伸ばしていきます。人の輪の中に入り、お仕事の場でやりたいことを選んで集中し、一日の生活の中で自分の役割をきちんとこなし続ける中で、頭の働き、感情のコントロール、意思決定のトレーニングを続けていくからです。
良い人格を形づくる「知」「情」「意」のバランスのとれた発達は、ニコニコ笑顔から生まれるといっても過言ではありません。
子ども時代は、アッという間に通り過ぎます。しかしその短い間に、その子の人格・人間性の土台がしっかりと作られていくのです。そんな子どもの成長の最大の手助けは、ニコニコ笑いしかありません。まずお家の人が朝からニコニコ笑って、子どもを気分よく送り出してください。
理事長 江口 浩三郎より
「たてわり保育の良いところ」

中秋の名月や彼岸花に、秋の風物詩を感じるこの頃ですが、今年は運動会が出来なかったことには、残念な気持ちでいっぱいです。また、ソフトバンクも今年は残念な結果になりそうですが、強さを続けていくのも大変なことなのでしょう。
ただ、子どもの世界だけは調子の波があってはいけません。あっという間に過ぎ去るこの時間だけは、元気いっぱいで充実したものにしたいと、毎日目を配り続けています。
ところで、日本の園や学校では、年令別クラスが普通です。それに対し本園では、1才児と2才児、それに3・4・5才児の異年令たてわりクラスとなっています。そしてこのクラスが意外と大きな教育効果をあげていることは疑いもありませんので、その理由はなぜなのかを、いくつか考えてみました。
① クラスでは、何でもできるあこがれの大きなお兄さん、お姉さんといっしょです。またよくなついてくれる小さな弟や妹といっしょです。けんかやいじめもなく大きな家族ともいえる暖かい雰囲気が生まれてきます。友達の幅も、たて・よことどんどん広がっていきます。
② 年上の子は、何でも目の前でやってみせてくれます。また親切に教えてもくれます。まさに小さな先生がまわりにいっぱいいるようなもので、良いお手本となっています。
③ 子どもどうしの学び合いということは、園やクラスで永い間行われてきた保育内容を、伝え合うことができるということです。通常「保育の伝え合い」というのは、保育者のあいだでやることですが、これが子どもたちを通して実現していきます。
④ 年令に応じたさまざまなクラス内での活動をすることにより、先生にあまり頼ることなく、自分たちでクラス運営ができるようになってきます。教え教えられる内容の幅が広がって、クラス全体に目が向けられるようになってくるからです。
⑤ 特に言えるのが、5才児(年長児)の責任感と指導性が育ってくることです。何かにつけ頼りにされる存在であることは、自分の立場の重さを感じ、みんなの期待に応えようと努めるからでしょう。
人間社会は、たて・よこ・ななめと複雑にからみあっています。その中で生きていくことは、決して避けて通ることのできないものです。子どもの社会は小さなものですが、たてとよこの人間関係をたっぷりと経験していけば、自分の立ち位置や他人との距離の取り方を少しずつ学んでいくはずです。そして必ず、未来の人生に生かしてくれるはずだと、確信しています。
理事長 江口 浩三郎より
「やってみせる、見て学ぶ」

異常な長雨で、室見川の水位の上昇には少なからずヒヤヒヤさせられましたが、無事に過ぎ去りホッとしています。時期はずれの長雨からも、気象状況の変化が感じられますね。
しばらく続いていたセミ捕りへの熱狂も過ぎ去り、プールともそろそろお別れです。それでも四季折々、子どもたちの活発な活動がとまることがありません。それに応じて、うすい皮をはぐように、成長の足音が止まることがありません。この秋に見せてくれるさまざまな姿を、また楽しみにしていきましょう。
ところで、子どもは自分の身の回りの環境に接し、そこから様々なことを学びながら成長していきます。しかし、まだ幼い子どもにとって、その環境が自分の成長にとってどんな意味があるのかも知らないし、また、どんな方法ややり方で、その環境を利用していいのかも知りません。だからモンテッソーリは、「教えなさい、教えなさい。良いものを教えるのにちゅうちょすることはありません」と言っています。そして教えるやり方として、まだ理解能力が不足している子どもたちには、「実際に子どもの目の前でやってみせ、それを見て学ばせなさい」と言っています。
それでは子どもたちに、どんな内容の活動を見せてあげたらよいのでしょう。
① まず第一は、何といってもクラス環境の主役である「モンテッソーリ教具」の扱い方です。子どもが自分の目でしっかり捕えられるように、また少しでも頭で理解できるように、「動作を細かく分けて」「ゆっくりと」「正確に」「精密に」行います。子どもが自分でできるようになるまで、繰り返して行います。マンツーマンが基本ですが、時にはグループでやることもあります。
② 次は、園内での生活活動に関する提示です。子どもはまる一日園内で過ごしますから、家庭と同じように沢山の生活活動があります。たとえば、「掃除の仕方」「衣服の整理」「給食や昼寝の準備」「本棚の整理」「遊具や靴箱の整理」「ドアの開閉やイスの出し入れ」等です。自由な生活のなかでも規律のある秩序を守るために、全ての子どもができるようになるまで、根気よく導いていきます。
③ 次は、人間としての正しい振る舞いを、先生自身がモデルとなって見せていくことです。「話し方や話の内容」「表情」「歩く姿勢」「他人との接し方」「服装や化粧」等です。子ども達の目は鋭く細かいところまで良く観察し、また真似をしようとします。先生としては全く気が抜けないことですが、モデルである以上仕方ありません。
子どもが子どもである期間は短いものであり、その間にものすごいスピードで成長していきます。そしてその成長の内容が、永い人生に大きな影響を与え続けます。それだけに、どんな環境の中に置くか、何をどう見せていくかは、私たちおとなの大きな責任と義務なのです。またそれが保育のやり甲斐とも言えるものですから、楽しみながら多くのものを見せ続けていきましょう。
理事長 江口 浩三郎より