「生命への援助」
先日の運動会には雨にもかかわらずたくさんの皆様に参加していただき本当にありがとうございました!突然の体育館での開催となり、「子どもたちの一生懸命な姿に感動しました」、「楽しかったです」などと多くの方から声をかけていただき、職員一同ほっと胸を撫で下ろしているところです。
さてその運動会、3歳児や4歳児のかけっこや踊りももちろんですが、オープニングの5歳児の体育サーキットでは特に、子ども達が誕生から今までの6年間にいかにたくさん体を動かしてきた成果が見事に集約され、本当に見ごたえがありましたね。
運動会のちょっと前に、ある5歳の男の子が、手にできたたくさんの豆を先生に自慢げに見せながら「ガンバリ豆、まだ10個まで作る!」と言ったそうです。努力を努力と思わずに、何にでも全力で取り組む子ども達。持って生まれた生きる力と、それを発揮できる環境さえあれば、目的に向かって繰り返し取り組み、私たち大人の出る幕がないほど自然と力をつけていく、という事実を目の当たりにするようなセリフですね。
ところで最近のことですが、モンテッソーリ教育の成果について1970年代〜2020年の間に研究された2000もの研究から、32の厳格な研究を選抜し分析して導き出された結果が発表され、全世界のモンテッソーリ関係者たちの間で話題を呼んでいます。
その結果とは、従来の伝統教育(一斉教育)に比べてモンテッソーリ教育で育った子ども達は、学術面では1/4以上、非学術面(自己規律、学校での幸福感、社会的スキル、創造性など)では1/3以上もスコアが高かったというものです。
この研究は8カ国(米国18、トルコ4、スイス3、イギリス、フランス、マレーシア、オマーン、イラン、フィリピン、タイ各1)にまたがり、保育園や幼稚園、小学校や中・高校と、0歳から18歳までの子どもが過ごす正当なモンテッソーリ教育を厳格に実践している園や学校において行われた研究結果なのですが、特に6歳までの環境がどのようなものであるかは、子どもの人格形成に特に大きなインパクトを与えると言われています。
人として生きていくのに必要なたくさんのツールを育む大切な人生最初の6年間。こんな意義ある時期に私たちも出来うる限りの最適な環境を整え、子どもたちの「生命への援助*」に力を尽くしたいと思います。
*マリア・モンテッソーリは教育について、「教育とは、生命への援助(Aid to Life)をするということです」と述べている。
園長より
「外遊びで育つもの」
待ちに待った運動会が近づいてきましたね。子どもたちも盛んに身体を動かして外遊びの時間にもそれぞれの種目の“自主練”を楽しむ姿がみられます。皆でさんざん練習した後にもまだまだ動きたい!ということでしょうから、子どもたちは本当に身体を動かすことで大きな喜びを得られるのでしょうね。
ところで、日本では子どもの体力が低下の一途をたどっていると言われて久しいですが、体力や運動機能の向上は、子どもが「自由に身体を動かすことのできる時間の長さ(+場所の広さ)」に比例しているそうです。今月は、外で思いっきり身体を動かしながら遊ぶことで育まれるものについてお話したいと思います。
育まれるもの1:体力や運動機能
自由に身体を動かすことで、体力や運動機能は向上します。運動というと「体育」と結びつける方も多いと思いますが、実は自由に身体を動かせる時間が大変貢献しているそうです。体育活動では「跳び箱の飛び方」などの技術的なことは身に付くでしょうが、子ども達の「しなやかな身のこなし」は日々の自由な遊びや活動から導かれるバラエティーに富んだ動きから身についていくものです。
育まれるもの2:危険回避能力
ブランコのような少し危険を感じる遊具で日々遊ぶことにより、子ども達の危険回避能力が育ちます。例えばスポンジで囲われたような、絶対に怪我をしないような場所でばかり遊んでいると、どんなに無茶をしても大丈夫と、間違ったメッセージを受け取ることになります。安全確保は第一ですが、少し高いところや滑ってしまうような場所で遊んでみることで少しずつ育まれているものなのです。
育まれるもの3:社会性
以前『人生で必要な知恵は全て幼稚園の砂場で学んだ』という本が出て話題になっていました。子どもたちは、異年齢での外遊びを通じ、友達を作ったり、集団で遊んだり、できない子を手伝ってあげたり、大人の目の届かないところでの諍いを自分たちで解決したり、とその後の人生で必要な社会性をたくさん育んでいます。大人の管理がキツく、設定された遊びの中ではなかなか育むことができない本当の意味での協調性や思いやり。エミールさん達がよく「思いやりがあるね」と評されるのは、もしかしたら外でたっぷりと遊んでいることにも関係があるかもしれないですね。
以上、3点あげてみましたが、実はまだまだ他にもたくさんの利点があります。ご家庭でも、例えば、
・休日は公園や自然の中に繰り出して、走ったり、登ったり、身体を動かす遊びをする。
・車移動ばかりでなく、歩いて行く、公共の乗り物を使ってみる(地球環境のためにも)
・必要以上の心配をやめ、子ども同士で遊んでいる場合はゆる〜く見守る
などなど、家のソファに張り付いている子ども達をできるだけ外に誘ってみてはいかがですか? 園長より
「健やかな目を育てよう」
暦の上ではそろそろ秋の到来ですが、まだまだ暑い日が続いています。ただ今週に入り、登園してくる子どもたちの数もグッと増え、蝉の鳴き声は「ツクツクボ〜シ」に変わりました!暑い中でも自然は少しずつ秋へ向かっていっていると思うと、少しホッとしますね。
さて、先日、数人のお母さん方との立ち話で、夏の間は家で過ごす時間が長かったため、どうしてもスクリーン・タイム(テレビ・スマホ・タブレットなどでの動画視聴)が長くなってしまって、その制限に苦労した、という話があがっていました。皆さんのご家庭ではいかがでしたか?
乳幼児にスマホやタブレットの画面を視聴させることの弊害には心理的なものはもちろん、多くのものがありますが、中でも「視覚発達」への影響は、子どもたちの今後の人生に大きな影響を及ぼしますので見過ごせませんし、できれば予防に徹したいところです。
子どもの五感を司る感覚器官は、そのほとんどが母親の胎内で発達し、誕生の頃にはすでに機能するようになっています。ですが、この「視覚」だけは、生まれた後に実際に瞼を開けて対象を見ることによって最後の調整と仕上げをすると言われています。
新生児がじ〜っと何かを注視する姿を見かけた方は多いと思いますが、これは赤ちゃんが対象を「追視」したり「焦点合わせ」をしたりして、視覚機能の最後の調整を行なっているためです。生後すぐの時点から赤ちゃん達は視覚を使っての「見る」‘お仕事’で大忙し、その目的は、自らの「両眼視(立体的に見る)」機能を創り上げることです。
その後、10ヶ月ごろからは、目で見ながら手を動かす、という「目と手の協応作業」が徐々にできるようになってきます。1・2歳児さん達が盛んに「ハサミで切る」「ボタンを留める」「じょうろで水をやる」などをやりたがる理由はココにもありそうです。
この目と手の協応作業が上手になってくると、その後は絵を描いたり、折り紙を折ったり。一言で「手が器用になったね」とよく言いますが、実はココでも「視覚」が大きく影響しています。最終的に4歳ごろになると、多くの子どもたちが「字」を書きはじめますが、これも手の動きが洗練し細かい動きができるようになるだけでなく、目がよく見えて、手の動きと協応していることが大きいわけです。
子どもの視力は平均2歳くらいで0.5に、5歳でようやく1.0に達するといわれています。そんな「視覚」の発達途上にある非常に大切なこの時期、昨今の調査では、スマホ以前の時代では全体の2%くらいの人にしかみられなかった斜視が、1歳半〜5歳までに急性として起こる割合が非常に増えているそうです。2018年ぐらいからは、「スマホ急性内斜視」が相次いでいるとの調査報告もあります。
目がよって、物が二重に見えてしまう「斜視」は、小学校にあがった子ども達の字の読解にも大きく影響し、最悪の場合は学習障害を引き起こしかねません。6歳までの子どもの健やかな視覚機能の成長のためにも、3歳までは0時間、6歳まででも1日30分くらいまで、一番多い日でも1時間までを目処に、スクリーンタイムの減少に取り組んでみましょう! 園長より