「一人でできるように手伝ってね」

お子様方のご入園、ご進級おめでとうございます。
今年の桜もきれいな花を咲かせ、園庭の子ども達を楽しませてくれています。また新たな年度が始まりますね。
さて毎年のことですが、新入園児の保護者の皆様方にとっては、まだまだ新しい環境に慣れない子どもの不安そうな顔を振り切っての出勤は、胸が張り裂けそうな日もあり、さぞかし後ろ髪を引かれる思いではないかと察します。
少し子どもを預け始める時期が早かったのではないか、こんなに泣いているのだからもう少し一緒にいてあげてもよかったかも、等々、いろんな思いが頭をよぎるでしょう。しかしながら人生は出会いと別れの繰り返し、さまざまな出会いがあれば別れる時も当然訪れるわけで、その「別れ」を、それぞれの子どもを次の「出会い」の場へと進めてくれる機会とも捉え直すと、少し気持ちも楽になるのではないでしょうか。
子育てにおいて、子どもとの愛着関係を結ぶことの大切さはよく謳われていますが、一方で、子どもから少しずつ離れていってあげることの意義はあまり語られることがありません。確かに、幼い子ども達は周りの大人を常に必要としていますので、心理的には常に寄り添ってあげることが大前提となりますが、だからといって、ずっと一緒に過ごしていることだけが必ずしも子どもの発達にいいとは限らないでしょう。というのも、子ども達は家庭の外に出ることで、それまでの家族内だけに限られていた人間関係から少しずつその輪を広げ、園でも先生やお友達と出会い、そこから徐々にではありますが、外の社会にも自分の居場所を見出すという家庭内だけでは得難い貴重な経験の機会も得ることになるからです。
エミール子ども園の教育方針を導いてくれたマリア・モンテッソーリは、ロンドンのある園を訪ねていたとき、ある子どもが、「自分でできるように手伝って!Help me to do by myself!」と叫んでいるのを耳にして、大人の過剰な介入は、子どもの「自立」にとってはそれが大きな障害となってしまうことをことあるごとに説いていました。つまり幼い子どもは常に「自分でできるようになりたいんだ!一人でできるように手伝ってほしいんだ!」と訴えているというわけです。
私たちの園でも、ご家庭と連携しながら、この子どもの願いが叶い、自立した自己を確立できるように、またそれを土台に育つ「自分でなんでもできるという自信と自由」を手に入れてもらうために、今年度も職員一同、一丸となって全力で援助していきたいと思います。
園長より
「なぜ活動を自分で選ぶのか~自由選択の理由~」

今年度もとうとう最後の月になりました。卒園式も再来週に控え、エミールこども園で過ごしてきた年長児達がこの最後の時期にどんな姿を見せてくれるのか、まだまだ驚かされることがあるのでは…とワクワクしています。
さて、私たちの園の考えの大きな柱となっているモンテッソーリ教育ですが、この教育と従来の教育現場との一番大きな違いは、なんといっても子どもが活動を「自由選択」することでしょう。大人が選んだ活動をさせるのではなく、「子どもが自分で何をするかを選ぶ」ことを保障しているのには次のような理由があります。
①自分で選んだ本当にやりたいことなので、常にモチベーションが高く、楽しんでやり続けられる
→ 集中力、継続力、「学ぶことの楽しさ」が育まれます。
②自分で「選ぶ」ためには、それまでの体験から培った知識を駆使して、日々、どの選択肢(活動・やり方)を選ぶかの比較・検討する機会を与える。
→ 自分で考える回路、論理性、推論力を育む。
③間違った選択をした時にその結果を体験する機会を与える。
→自分で選んだ結果を体験することで、少しずつより良い選択ができるようになる。柔軟に考える力が身に付く。
以上、そう考えてみると、「選ぶ」ということはそんなに簡単なことではなく、日々の生活の中で、何度もいろいろな場面で自ら意志決定していくことでしか身につきません。
人生はさまざまな選択の連続で進んでいくわけですから、幼い頃のまだたくさん失敗してもいい時期に、自分の考えで選んでみて、その選択がいいものでも間違ったものでもその結果を体験し、少しずつ良い選択肢を選ぶことができるようになる、これがとても大切なことだと思います。
いつも人からあてがわれてばかりの人々は、その人生の最終章に自分の人生は何だったの?となりかねない。ですから、子ども達にはしっかりと自分で考えて、その選択肢からより良いものを選びとることができるようになっていってほしいと願います。
最後に、いつもながら、ここで一番の大きな障害物となるのが私たち「大人」です。子どもに失敗させないように、嫌な思いをしないように、…とついついこちらで選んであげることをしてしまいがちですが、ここはグッと我慢。子ども自身の選択を尊重し、その結果で学んでいく場面で邪魔をせず、見本を見せたりやり方を教えたりすることで、間接的に援助していくことを学んでいきたいものです。良かれと思ってつい手を出し口を出し、なかなか実践は難しいのですが、子ども達が真の選択力を身につけてもらうためにも、家庭と園でしっかりと手を取り合って、今後とも一緒に学び続けましょう。
園長より