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「目の前にないものを理解していく」

とうとうコロナウィルスが園にも入り込み、しばらく休園させていただきました。ご迷惑をおかけしたことを、深くお詫びいたします。

そろそろワクチン接種のニュースが出始めましたが、期待どおりの効果が挙がるといいですね。

やはり園内に、子どもたちの元気な姿と大きな声があがってこその子ども園です。これが再び途切れることがないよう、できる限りの対応策を実行していきたいと考えています。

ところでみどり組さんは、もうすぐランドセルを背負った1年生になります。ランドセルの中は、文字や数字でいっぱいの教科書ですから、学校生活というのは、文字や数字を使いこなすところと言っていいでしょう。

とはいえこの子どもたちは、誕生から数年間は文字や数字の意味がわからず、どんなものでも目で見たり触ったりして、時には砂場の砂を口に入れたりして、環境を確かめてきました。完全に具体物の世界にいたのです。こんな子どもたちを、教科書すなわち抽象の世界にうまく導いていくのが、この6年間という時間だったのです。そして、毎日クラスで目にし手で取扱うモンテッソーリ教具は、驚くほど自然にその機能を果たしてくれるのです。

たとえば、日常生活の練習の練習や感覚教育では、物の名前や感覚で感じたことを、全てことばで理解し記憶していきます。

次に算数教育では

①最初は、「算数棒」「ビーズ」「数字板」等、具体的な物から数の世界に入っていきます。ここでは100個や1000個のビーズの固まりがありますし、「1000の鎖」では、10のビーズを100個も実際に並べて、1000という数字の大きさを確認します。

②次に「切手あそび」では、同じ大きさの切手型のビーズに、1、10、100、1000が記されていますので、抽象の世界への入口となります。

③次は「たし算板」とか「かけ算板」とかで、多少の具体物の助けを借りながらも、記憶に基づく数字の操作を行っていきます。

言語教育も同じです。最初は実物やミニチュア、絵カード、絵本を使って、名前や文字に慣れていきますが、「文字ならび」「文字さがし」「絵カード」「赤いカード」「名詞と役割のシンボル」等の順に進んでいって、言語の世界へ入っていきます。

目の前にないもの、手で触れないものでも、自分の頭で理解できるようになれば、環境のとらえ方がぐっと広がり、また深まってきます。すなわち、ひとりの人間として段階を一歩登ったことになるのです。1年生のランドセルの中身には、その子の生まれてからの歴史が詰まっています。何とも楽しい風景ですね。

理事長 江口 浩三郎より

 

「子どものくらしは自分づくり」

明けましておめでとうございます。

通常ならば、新年のお祝いとか今年の希望などに考えをめぐらせるところですが、今のところは、新型コロナがいつ収まるのか、ワクチンの接種がいつから始まるのかしか思い浮かびません。

そうは言っても、明るく元気な子どもたちの姿にこそ、未来の日本や世界の希望が満ちあふれています。今年も、この子どもたちのために最善のくらしを約束すること、これが私の進むべき道であることははっきりとしています。

ところで子どもたちは、毎日おとなの何倍も身体を動かし、楽しそうに遊んでいるように見えますが、実はそうではなく、現実の目標は「自分を創っていくこと」にあります。

なぜなら、殆ど空白の状態で生まれる赤ちゃんは、8才までに90%できあがる脳の発達に合わせて成長していく必要があり、とてものんびりと遊んでいるひまはないからです。

自分づくりの第一歩は、何といっても身体づくりです。それも、ただ単に大きくなるのではなく、自分の思いどおりに動かせる身体をつくることです。チャレンジ精神を保ちつつ、自分で考えながら動いていくトレーニングを続けることによって、身体の動きをコントロールできるようになります。

次に知性の発達、すなわち自分の頭の中を整理し、自分で考え問題点を解決していく力をつけることです。「論理性」や「抽象性」の獲得が目的ですが、このためには、モンテッソーリの教具が大いに役立ってくれるでしょう。

もひとつ大事なことは「社会性」です。人間には群生本能があるので、多くの他人のなかでもまれながら、上手な付き合い方を学んでいかなければなりません。こども園での生活は、まさにぴったりですね。

こんな子どもの自分づくりに対し、大人の適切な手助けがあれば、その効果はぐんと大きなものになります。

その第一は、子どもの人格を尊重し、自由意思による活動を認めることです。私たちはこれを「自由活動保障の原則」と呼んでいますが、これによって子どもはまさに自由でのびのび、生まれ持っている自発性を生かしながら他の人の自由も尊重し、平和共存の道を歩いていけるというものです。

もうひとつのおとなの役割は環境の整備です。おとなが、いくら口先だけで「自由にやりなさい」「知性を伸ばしなさい」と言っても、それを実現させる環境がなければ無意味です。

子どもが毎日の生活の中で、無理がなく喜んで取り組める環境の整備こそ、おとなの知恵のしぼりどころだと言えます。

これまで述べたことがうまくかみ合ってくると、子どもの成長は「良い人間」になる方向へ向かいます。子どもの動きを見るのが、私にとって大きな楽しみとなっているのは、そんなところに理由がありそうですね。

理事長 江口 浩三郎より

「ママ、ひとりでできるように手伝ってね」

ソフトバンクが巨人をコテンパンにやっつけて、多少はコロナのうさばらしが出来たような気がします。それにしても今年は春以降、良いニュースが少なかったようです。まだまだ見通しは明るくなりませんが、私にとっての大きな救いは、目の前で見る子どもたちの明るさと元気の良さです。社会のムードがどうであれ、ひたすらに自分づくりに励む姿には、ただただ感動しかありません。保育という仕事は、何と素晴らしいものなんでしょう。

ところで数年前に亡くなられた相良敦子先生は、モンテッソーリ教育が家庭でも理解、

実践できるような著書を、数多く執筆されています。その中でも特に多く読まれているのが、「ママ、ひとりでできるように手伝ってね」です。シンプルなテーマではありますが、実はモンテッソーリ教育の全てが表現されているといっても、言い過ぎではありません。その理由を述べていきましょう。

まず子どもの一番の特徴は、生まれつき誰でも、自分の力で成長しようとする能力を持っているということです。休むことなく動き回り、周囲の環境に触れたがり、身近な人の話すことばや行動を真似したりして、どんどん自分の中に取り込んでいきます。又、次々と敏感期が訪れて、秩序や運動、感覚、言葉などの習得に夢中になります。まさに自分で何でもできるようになるために、「自己教育力」を身につけているのです。

それではこんな子どもたちのための、私たちの役目は何でしょう。

まず第一に、この貴重な能力を発揮するのを邪魔しないことです。子どもはまだ小さいからといった目で見ずに、ひとつの人格を持った人間として認めてあげましょう。自発性を尊重して、子どもが自分の意思で自由に援助できるようにしてあげましょう。いわゆる「過保護、過干渉」は絶対に禁もつです。

次に、子どもの敏感期を満足させるような環境を整えてあげましょう。全てに対応するには大変なことですが、園では可能な限りの努力をして応えてあげています。

さらにその環境に、無理なくなじませてやることも大事です。そのために先生は「提示」をします。子どもの発達段階や興味の度合いを確かめ、子どもの意思に沿って環境の意味を理解させていきます。

子どもの自発性とおとなの配慮がうまくかみ合えば、生まれながらに持っている良い素質が、どんどん表に現れてきます。これを「正常化」と呼んでいますが、立派な人間、良い人格者となるために磨きをかけているのです。

毎日、子どもたちの明るい笑顔と活発な行動を見ていると、相良先生の伝えが、心から感じ取れるような気がしますね。

 

理事長 江口 浩三郎より

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