「子どもは、自分で環境を選べない」
運動会やいも掘り遠足と、秋のさわやかさを楽しんでいるうちに、頭の上ではけやきの葉が色づきはじめました。寒い季節に、暖かい日の光をたっぷりと浴びせる準備をしているのでしょう。
園庭では、早くもオレンジ組黄色組が体育サーキットの準備です。いつか自分の番が来るまでに、何百回、何千回繰り返すことになるはずです。手のひらのまめをものともせず、ニコニコ笑いながら続けていくのには、感心させられますね。
そろそろ来年度の保育所入所申請の時期ですが、これはとりもなおさず、親による子どものための環境選びです。子どもには残念ながら、自分の人格育成のための環境選びの能力はまだありません。だから、保護者が責任を持って選ぶことになります。
選ぶ基準には、保護者の子どもの成長に対する想いが込められます。「心身ともに健康でたくましく」「自由にのびのびと自分の思いどおりに生きる」「友だちを沢山つくって良い人間関係をつくる」「他人への思いやりの気持ちを持って、広く社会に貢献する」等などです。
こんな想いが込められ、保護者から選ばれて入園してきた子どもたちのために、保育園は全責任をもって応える必要があります。
〇 まず、けがや病気を防ぐために環境設備の安全性に配慮し、また毎日園で口に入れる食べ物の、研究・注意を怠るわけにはいきません。
〇 次に、子どもの自由意思を尊重し、自己選択が中心となる生活のなかに置きます。自分のやりたい時にやりたいもの、その結果も全て自分のものという毎日は、どれだけ子どもの精神をたくましくしてくれることでしょう。
〇 また、自分の思いどおりに動ける筋肉を作るためのチャレンジ精神は、たくましい体づくりへと進んでいきます。
〇 幅広い人間関係づくりには、「たてわり保育」が最適です。水色から緑まで4色が入り交じった人間関係が、絶対に悪いはずがありません。
〇 自分の自由な意思が尊重され、ひとり前の人間として認められていると、平和でおだやかな気持が生まれ、他人への寛容、奉仕の精神が芽生えます。成長したのちには、周りから大きな心を持った人として尊敬されるでしょう。
そのうちに、子どもは環境を自分で選ぶようになります。その時に、保護者やまわりの大人が準備してくれた環境が、自分で選ぶ時の大きな手助けになってくれます。子どものためにどんな環境を選ぶかが、子育ての大きなポイントと言えるでしょうね。
理事長 江口 浩三郎より
「楽しくなくては保育園ではない」
ようやく暑さもやわらぎ、秋の気配がただよってきました。毎日、一生懸命運動会の練習に取り組んでいる子どもたちのためにも、この涼しさは何よりです。
しかしこの夏は、スポーツでも熱くなりました。アジア大会・テニス・バドミントンなどでの若い選手の態度は、感動でいっぱいです。以前の、外国に行ったらひ弱になるという姿はどこにもありません。たくましく伸びて行く、日本の未来を感じさせられています。
ところで私たちは毎日、笑顔いっぱいで遊んだり、おだやかな表情でお仕事をしている子どもたちを見ていますが、それが表面だけでなく、心からのものであることを念じています。というのも、まだ人生のスタート台に立ったばかりで、置かれている立場がよく理解できず、「そもそも、なぜ自分は保育園という所にいるのだろう?」と思うかも知れません。暖かい家庭や家族と別れて、沢山の見知らぬ子どもたちの中に投げ込まれれば、気持ちが乱れるのも仕方ありません。その乱れをなくし、少しずつ気持ちを開かせながら、「いっぱい遊べる」「いっぱい学べる」「自分がどんどん大きくなっているのがわかる」、そして「保育園というのは楽しい所だ」と感じてもらいたいのです。
最初はどの子も手さぐりです。手さぐりしながら、ひとつずつ扉を開けていきます。しかしながら、扉の光が暗かったりどんよりしてたり汚れまくっていたら、とても一歩足を入れることはしないでしょう。しかし、決してそうはさせません。というのも、扉の先で待っている私たちはみんな、「子どもはえらい」「尊敬する」「勉強になる」という気持ちを持っているからです。そして「この子たちに最も良いものを準備してあげよう」と思っています。知性、情操、意思がバランスよく発展していくように、身体的能力が順調に伸びていくように、みんな仲よしの社会性がしっかりと身につくようにと、いつも考え実行しています。子どもたちからの信頼感・期待感がどんなものかは、笑顔や表情で判断します。だからいつも子どもの顔色が気になるのです。
「楽しくなければ人生ではない」と言いますが、同じように「楽しくなければ保育園ではありません」。園児の成長に全責任を負っている私たちですが、子どもたちの輪の中に入って、自分も楽しみながら責任を果たしていきたいと思っています。
理事長 江口 浩三郎より
「チャレンジこそ、子どもの生きがいである」
次から次へとやってくる台風のおかげで、何とも落ち着かない夏の終わりですが、暑さ続きの毎日をうまく乗り越えることができましたか。私にとっては、毎日プールから聞こえてくる子どもたちの大きな歓声が、何よりの元気づけとなっています。
せみの声から虫の声に変われば運動会の季節です。絶え間なく成長し続ける子どもたちの、力強いエネルギーがいっぱいの保育園ワールドを、大いに楽しんでいきましょう。
ところで運動会を見て、自分の子どもが「いつの間にあんな動きができるようになったんだろう」と、驚かれることがあるかも知れません。全くそのとおりですが、子どもがその姿を見せるまでには、どれほどの時間とエネルギーを費やしたかを知れば、もっと驚かされることでしょう。それほど子どもはチャレンジ精神のかたまりですが、その理由をいくつか挙げてみます。
- まず最初は、自発的発達能力です。
- 子どもは誰でも生まれつき自分の意思で、また自分の持っている能力で前向きに進もうとする積極性があります。立ち止まることは「自己否定」につながるので、前進するための無限のエネルギーが湧いてくるのです。
- また子どもには、繰り返して同じ活動をするという特徴もあります。余計な雑念もなく取り組みますので集中力も高まり、良い結果がどんどん出てきます。
- 良い結果を出した時に味わう「達成感」「成功感」は、自分がひとつ大きな人間になったような気分にさせ、そこから「もうひとつ」という活動が始まります。
こんな子どもの前向きな心を見逃すことなく、私たちはさらにかきたててやる環境を準備してやらなければなりません。幸いなことに、子どもが毎日取り組むモンテッソーリ教具は、「やさしいものから難しいものへ」「具体的なものから抽象的なものへ」と進むべき順序がはっきりしています。また園庭の遊具も、低い鉄棒から高い鉄棒へ、三段のとび箱から五段のとび箱へと進んでいきます。
モンテッソーリは、「子どもはまだ自分の手はとどかないが、気持ちがとどきそうなところに挑戦を続ける」と言っていますが、「うんてい」や「山小屋」に挑み続ける姿にぴったりのことばです。単なるテクニックの習得ではなく、人格の創造が子どもの活動の目的ですから、毎日のチャレンジがまさに「半端ない」のももっともだとうなずけますね。
理事長 江口 浩三郎より