「お仕事は、こどもに何をもたらすか」
全国各地で30度を超えたというニュースを聞きながらいよいよ夏を迎えますが、まずは暑さにも負けない体力づくりを心がけましょう。子どもたちはと言えば、園庭におおいかぶさる木かげをうまく使って、活動に余念がありません。とび箱・鉄棒・山小屋・うんていと、いつもながらの見慣れた風景ですが、それだけに、どんな子どもも持っている「自発的成長力」を感じさせられます。私たちも、こんな子どもたちを横目に見ながら、夏を乗り切っていきましょう。
ところで子どもたちは、朝登園してひとしきり遊んだ後クラスに入り、数時間作業に取り組みます。この作業を英語のワークから訳して「お仕事」と呼んでいます。入園してから卒園まで、それこそ何年間もお仕事を続けることになるのです。この時期の子どもの成長にとって一番大切な活動ですが、具体的な影響についていくつか考えてみましょう。
① 誕生後6才ぐらいの間までに、次々とやってくる「敏感期」を満足させてくれます。「運動」「感覚」「言語」「算数」「文化」等の分野に、本能的に関心が向けられる時期ですが、そのための環境が準備され、心ゆくまで取り組めるからこそ満足感が得られるのです。
② 子どもが自分の頭で考えることができるための、「知性」が育ってきます。
知性のはたらきは物ごとを「分類する」ことから始まって、「集める」「比べる」「合わせる」「連続させる」「包む」と進んでいきますが、まさにお仕事の内容そのものです。これによって、「自分で考え判断する」という人間の基本的行動が身についてきます。
③ 抽象的な物ごとの考え方ができるようになります。
私たちおとなは、「数字」や「文字」を中心として、目に見えないもの、現に目の前にないものでも手がかりとして判断できる「抽象の世界」に生きています。これに反し子どもの世界は、具体物が中心となっています。毎日のお仕事は、この2つの世界を結びつけ、子どもを無理なく混乱させずに抽象の世界へ連れて行きます。だから小学校では、教科書を開いて学ぶことができるのです。
来る日も来る日も時間をかけてお仕事に取り組むうちに、子どもは自分のなかで何かが変わっていくのを感じます。その変化が、上質な品性を伴う人間性を形づくっているのです。表情を見て下さい。笑顔を見て下さい。お仕事からもたらされたパワーが、必ず私たちにも伝わってくと思いますよ。
理事長 江口 浩三郎より