「ちがった人と同じ道を歩いていく」
園庭の桜も花が開きはじめ、すぐに満開となって目を楽しませてくれる季節になりました。同じく園庭で遊ぶ子どもたちも、進級の喜びがかぶっている帽子の色になってあらわれ、元気よくまじり合っています。ここに間もなく新入園児が加わり、さあまた新しい1年の始まりです。新しい成長の始まりでもあります。成長のためのエネルギー全開の子どもたちの姿を、私たちも楽しみましょう。生きる喜びを分け与えてもらえることにも、感謝していきましょう。
ところで4月は新学期ですが、新しいことのひとつに、今まで知らなかった人に出会うということがあります。出会ったうえで、同じ方向にいっしょに進んでいくのです。新しい社会への仲間入りとも言えるでしょう。「社会」とは英語でソーシャルですが、本来の意味は、「ちがった人たちと同じ道を行く」ことだそうです。
ちがった人と同じ道を行くとは、どんなことでしょうか。ひとりぽっちで行くのでしょうか。誰かから無理矢理引っぱられていくのでしょうか。途中で立ち止まったり、引き返したり、道の外に出たくなる時があるのでしょうか。それとも楽しくルンルンと、他の人と足並みをそろえて行けるのでしょうか。
社会に入り、ひとりの社会人として成長していくことは、決して簡単なことではありません。経験豊かなおとなだったらともかく、まだ人生をスタートしたばかりの子どもにとっては、同じ道でも坂道や曲り道ばっかりでしょう。
このきびしい現実に子どもたちがうまく対応できるように、保育園でもいくつかの工夫をしています。
① あくまでもその子のペースを尊重し、無理して引っ張っていくことはありません。歩く早さのちがいもその子の個性ですし、どの早さで歩いたら楽しいかは、本人しかわからないからです。
② 道ばたに、子どもが興味を持ちそうな教具や遊具を、ズラリと用意しておきます。どの子にも「敏感期」や「吸収精神」があり、必ずどれかに引き付けられます。それを繰り返すことで、はるか遠い所まで歩いてしまっているのです。
③ 「たてわり保育」で異年齢の子もいますので、助け合いの精神にあふれています。立ち止まりたくなった時、引き返したくなった時は、必ず救いの手がさしのべられるはずです。
樹木の葉っぱは、互いにこすれ合うほどつやつや光ってくるそうです。人間も同じく、多くの人と同じ道を歩いていくことによって磨かれ、人間として成長するはずです。
この一年間、また子どもたちの歩きぶりを楽しみにして、眺めていきましょう。
理事長 江口 浩三郎より