「ひとつの山の頂上へ」
本来なら、心を弾ませるような春がやってきたというのに、新型コロナウィルスのおかげで、暗いニュースばかりが続いています。人の歴史のなかで、いろんな病原菌との闘い が繰り返し表れているので、これも仕方のないことなのでしょうか。
それはともかく、この1年間の子どもたちの成長ぶりを、またまた見せつけられました。
毎日が新鮮だったということは、毎日新しい生命力が生まれ続けてきたからでしょうね。
ところで、この3月で卒園するみどり組は、ひとつの大きな山を登り切りました。人間の成長段階では、いくつかの山を登らなければなりませんが、特に最初の山は大変です。何しろ、たった6年間で脳の8割を完成させ、人格の大きな土台を創り上げなければならないからです。その土台の具体的な内容を、ここでいくつか挙げてみましょう。
① 自分の意思で考え判断し実行する生活を続けたことで、自立し自由な生き方への道が開けたことです。これは、自分がひとりの人格を持った人間として尊重されることで、幸福の第一条件です。寛大な気持で他人を愛し、許していくという気持も備わっています。
② たくさんの自分とちがった他人といっしょに、うまくバランスを取りながら生活していけるようにもなりました。社会生活とは、「ちがった人と同じ道を歩く」ことですが、これが中々難しく、時には道を踏み外すこともあります。そこをうまく避けていく基本的な智恵は身についたのではないでしょうか。
③ 自分の身体を、自分の想いどおりに動かせるようになってきました。生活とは動作の連続ですが、これが不器用だったら苦労します。生まれてすぐは人の世話になるばっかりだったのが、決してあきらめないチャレンジ精神のおかげで、今では実に見事な身体の動きを見せてくれるようになりました。
④ 目に見えない奥深いところで、「自己尊重」「自己信頼」「自己肯定」の感覚が根づいており、自分の誇りや生きていくための自信となって表れています。これは、「いつでもどこへでも行けるぞ」「何でもできるぞ」といった表情にあらわれています。
それにしても今年のみどり組からも、沢山のことを学ばせてもらいました。本当に、山登りの上手な子どもたちばかりです。卒園したらそれぞれの学校に分かれて、また自分で見つけた山に登り続けることでしょう。自信に満ちたそのうしろ姿を、いつまでも見つめていたい気持でいっぱいです。
理事長 江口 浩三郎より