「ママ、ひとりでできるように手伝ってね」
ソフトバンクが巨人をコテンパンにやっつけて、多少はコロナのうさばらしが出来たような気がします。それにしても今年は春以降、良いニュースが少なかったようです。まだまだ見通しは明るくなりませんが、私にとっての大きな救いは、目の前で見る子どもたちの明るさと元気の良さです。社会のムードがどうであれ、ひたすらに自分づくりに励む姿には、ただただ感動しかありません。保育という仕事は、何と素晴らしいものなんでしょう。
ところで数年前に亡くなられた相良敦子先生は、モンテッソーリ教育が家庭でも理解、
実践できるような著書を、数多く執筆されています。その中でも特に多く読まれているのが、「ママ、ひとりでできるように手伝ってね」です。シンプルなテーマではありますが、実はモンテッソーリ教育の全てが表現されているといっても、言い過ぎではありません。その理由を述べていきましょう。
まず子どもの一番の特徴は、生まれつき誰でも、自分の力で成長しようとする能力を持っているということです。休むことなく動き回り、周囲の環境に触れたがり、身近な人の話すことばや行動を真似したりして、どんどん自分の中に取り込んでいきます。又、次々と敏感期が訪れて、秩序や運動、感覚、言葉などの習得に夢中になります。まさに自分で何でもできるようになるために、「自己教育力」を身につけているのです。
それではこんな子どもたちのための、私たちの役目は何でしょう。
まず第一に、この貴重な能力を発揮するのを邪魔しないことです。子どもはまだ小さいからといった目で見ずに、ひとつの人格を持った人間として認めてあげましょう。自発性を尊重して、子どもが自分の意思で自由に援助できるようにしてあげましょう。いわゆる「過保護、過干渉」は絶対に禁もつです。
次に、子どもの敏感期を満足させるような環境を整えてあげましょう。全てに対応するには大変なことですが、園では可能な限りの努力をして応えてあげています。
さらにその環境に、無理なくなじませてやることも大事です。そのために先生は「提示」をします。子どもの発達段階や興味の度合いを確かめ、子どもの意思に沿って環境の意味を理解させていきます。
子どもの自発性とおとなの配慮がうまくかみ合えば、生まれながらに持っている良い素質が、どんどん表に現れてきます。これを「正常化」と呼んでいますが、立派な人間、良い人格者となるために磨きをかけているのです。
毎日、子どもたちの明るい笑顔と活発な行動を見ていると、相良先生の伝えが、心から感じ取れるような気がしますね。
理事長 江口 浩三郎より