「人の財産は人である」
久し振りに台風が福岡に近より、園庭の樹木も大ゆれでした。特別の被害がなかったので、胸をなでおろしています。
台風一過の秋空のもとでは、運動会に備えて子どもたちの姿が躍動しています。さすがにこれまでの永い間の成果でしょうか。動きになめらかさと力強さがあります。子どもの今現在の気持が、そのままあらわれているのでしょう。どうか楽しみにしていて下さい。そして当日は、しっかりと目に焼きつけておいて下さい。
ところで、私ほどの年令(78才)になって、今何が大事なことか考えれば、やはり自分で行動できる健康と、生活していくためのお金です。これに加えてもうひとつ大事なことは、今つき合いができる親しい人たちです。
長い人生を振り返って、今さら反省したり後悔しても仕方がありませんが、思い出すのは、「どんな人に出会ったのか」「どんな人から人生のアドバイスを受けたのか」ということです。また、「今自分のまわりにはどんな人たちがいるのか」についてもよく考えます。というのも、人間関係というのは、健康やお金と同じくらい生きていくうえで大事なものだからでしょう。
私の父は私が小さい頃、「勉強しろ」とは全く言わず、「今日は誰と遊んだか」「今日は何して遊んだか」ばかり聞いていました。学校の先生でしたから、勉強と同じくらい大切なものが世の中にはある、と言いたかったのでしょう。
4月号で「子どもの社会性」について書いたにもかかわらず、又なぜ同じことを言うのかといえば、スマホやゲーム機の氾濫が目につき過ぎるからです。確かにこんな便利なものはないでしょう。こんな面白いものはないでしょう。しかしそこには人の影や人のぬくもりはありません。生きた経験を生きた言葉で聞くことはできません。何より、人間が持っている気高い魂や感情のゆれ動きを感じることはできません。スマホに投入して、どんな人生が築けるのか想像もできません。
私は毎日、広くもない園庭で、子どもたちがぶつかり合いながら遊んでる姿を見るのが大好きです。ぶつかることは、他の子の魂に触れるからです。おしゃべりは、他の子の心情を感じ取れるからです。その繰り返しで、子どもの人間性は益々磨かれていきます。そして、どこへ行っても光輝くことができます。一度きりの人生ですから、その輝きを見失なわないようにしましょう。
理事長 江口 浩三郎より